iBooksとAdobe Digital Editionsの画像表示動作の違いにご注意

5月9日に電子雑誌『論集文字』第1号が発売されました。注目のEPUB形式で作成された雑誌です。
https://sites.google.com/site/mojiken/shuppan-butsu/ronshu_moji_no1

CAS-UBプロジェクトでは、かねてよりこうした論文集や科学技術的書籍をEPUB出版の重要な利用分野として位置づけています。そこで、早速、購入してチェックしてみました。もちろん、内容にも興味はありますが。

EPUBファイルをダウンロードして最初に、PC用のAdobe Didital Editionsで開いてみたのですが、ざっと見ますと、かなり多くの画面が次のように画面をはみ出してしまいます。この現象は文字を小さくしても変わりません。

それではと思い、iPadiBooks 1.2.2)で表示してみました。iPadでは次の図のようにうまく表示できます。

これはなぜかなと思い調べてみました。

このページは1093×1458ピクセルの画像(JPEG)なのですが、EPUBで表示するときの画像の大きさが指定されていないので、リーダによって表示サイズが変わってしまっています。このことは先日来の一連の記事「EPUBで画像の大きさを指定する方法を調べた」で書きました。iBooksでは画像の大きさが指定されていないときは自動的に上位要素の表示幅一杯するのに対して、Adobe Digital Editionsは画像の本来の大きさ(ピクセル数)で表示するという動作の違いに起因するものです。

Adobe Digital Editions の方がCSSの仕様解釈としては正しいのですが、制作者はiBooksでの閲読だけを想定してiBooksで確認を行なっているようです。このためAdobe Digital Editions では画像がはみ出します。

論文や技術書籍では画像の重要性が高いと思いますが、画像が見えないということになってしまうと、Sony ReaderなどAdobe Digital Editions ベースの端末では読めないことになります。本来はすべてのリーダがCSSの仕様どおりの動作をすると良いのですが、現時点ではそうなっていません。このため制作者側がマークアップCSSスタイルシートの両方で問題を回避するように注意しなければなりません。こうした現象は他にもあるようなので、制作者の複数の端末をサポートするための負担が予想外に大きくなるのではないかと危惧しています。

【ご参考】EPUBで画像の大きさを指定する方法を調べた
1.http://d.hatena.ne.jp/cassupport/20110424/1303617075
2.http://d.hatena.ne.jp/cassupport/20110426/1303775762
3.http://d.hatena.ne.jp/cassupport/20110427/1303857033