CAS-UBでPDFとEPUBを制作する際の、フォントの問題の整理と解決策
PDFの作成、あるいはEPUBを作成する場合、環境によってインストールされているフォントが異なっていることが大きな問題となります。この際、考慮に入れるべき環境を大きく分けると次の3つになるのでしょう。
1.原稿を執筆した環境
2.PDFとEPUBを制作する環境
3.PDFとEPUBを複製・閲覧する環境
出版物の制作においては1→2→3の工程で出版物のコンポーネント(文章、図版、表など)を複製していくことになります。
工程ごとに表示・編集ツールが同じ場合と異なる場合があります。ここでは問題を簡単にするために、表示・編集ツールが同じと仮定してみます。
前工程で専門的・特殊なフォントを使用していた場合、次工程にそのフォントがないことがあります。この場合、表示・編集ツールは指定されたフォントを別のフォントに置き換えます。Windowsの場合は、表示・編集ツールではなく、Windows自身がフォントを適当に置き換えて文字を表示する機能を持っています。また、たとえば、アンテナハウスのAH Formatterはフォント・エイリアス機能(あるフォントを別のフォントに見立てる)機能を備えていて、存在しないフォントを別のフォントを指定して表示できます。
こうしたことから、前の工程で利用したフォントが次の工程に存在しない場合、その見栄えを再現することができないという事態が生じます。この場合の見栄えとはレイアウトと文字の形(明朝・ゴシックなどの書体、縦書き用の字形と横書き用の字形など)です。
なぜレイアウトを再現できないかといいますと、多くの場合、フォントの中の情報(フォント・メトリック)をつかって文字の位置を決めているからで、たとえばベースラインの位置がフォントによって微妙に異なるならば、文字の表示位置が微妙にずれてしまうことがあります。また、明朝体系のフォントをゴシック体系のフォントに置き換えてしまうと、文字の字形が異なってしまうので印象が大きく違うことになってしまいます。
これを避けるためいくつかの方法があります。
一つ目は、前工程でフォントをアウトライン化することです。フォントをアウトライン化すると、フォントの字形描画情報がベクトル図形となります。
二つ目は、フォントの埋め込みです。これはフォントの中のメトリックスや字形描画情報をファイルに埋め込むことです。
三つ目は、Webフォントです。インターネットを使ってフォント情報を供給することで、環境にフォントがない、という状態をなくすことに相当します。
他にも方法があるかもしれませんが、残念ながら知りません。
これらの方法が実践的にどの程度まで有効かということは、もう少し実験を重ねて知見を高めないと判りません。
○AH Formatter
http://www.antenna.co.jp/AHF/
○CAS-UB
http://www.cas-ub.com/