「JBasic マークアップ指針」(10月13日版)を一読しての感想です。
イーストからJBasicというEPUBへのマークアップのガイドラインが発表されたので、ざっと目を通しました。
○JBasic
http://www.epubcafe.jp/jbasic
実は、自分もちょうど同じようなマークアップのための標準的属性の使い方を考えているところです。早速、一読してみていくつかの疑問を感じたのでメモしておきます。
以下は、まだ感想のレベルなのでそれほど理論武装してませんが。
具体的には次の点です。
1.見出し
見出しの体裁を指定するためのクラスとしてlarge-heading, small-heading, medium-headingが推奨されてますが、たとえば、<h1 class="large-heading">の表示サイズは、<h1 class="midium-heading>よりも大きく、<h1 class="midium-heading>の大きさは、<h1 class="small-heading>よりも大きく表示すると言う意味なんだろうが、ではなにも指定していない<h1>の表示サイズはどうするのだろうか?
一方において、subheadingというクラスが規定されているが、subheadingは意味的なニュアンス(コンテキスト)を感じる。このsubheadingはコンテキストlarge-heading, small-heading, medium-headingはレイアウトだとすると、このふたつのクラスは直交(=独立)しているのだろうか?
このあたりの整理が曖昧だと思う。マークアップしにくいのではないだろうか。
2.段落の字下げ
「段落の行頭字下げにはテキストの先頭に全角スペースを入力する方法と、スタイルシートで行頭インデントを指定する方法がありますが、JBasic では前者の方法でマークアップすることを前提とします。」
私見では、これが一番いけない。段落の行頭で字下げするには、全角スペースを入力することを基本にすると通常のテキストものの書籍を作成するときは、各段落先頭に全角空白をいれなければならなくなる。
そうすると今すぐ思いつくだけでも次のような問題が生じる。
(1)文章を編集して、二つの段落を接続したときには、間に空白が入るのでこれを削除する必要があり、その逆に、分割したときには新しくできた段落の先頭に空白を入れる必要が生まれる。これはコンピュータによるテキスト処理の障壁になる。
(2)段落に、傍線を引いたり、圏点を付けるときどうするか?行頭の全角空白を避けて傍線を引いたり圏点を付けるマークアップが必要となる。こうなると、<p class="important">...</p> というようなマークアップをしておいて、importantな段落に傍線を引く、というようなスタイル付けが行えなくなる。
(3)箇条書きと通常段落の指定・解除といった操作が可逆でなくなる。
(4)翻訳文書で一番困るのが全角空白。文中の全角空白は外見上半角空白と区別がつかないので、xml:lang="en"としたとき、いきなり'?'になったりする。翻訳メモリなどでテキストマッチングするときも困るのではないだろうか?(これは想像)。
このように段落先頭に全角空白を入れるのはコンテキスト重視の観点からは、私的には百害あって一利なしと思う。JBasic自体は段落先頭を字下げしないスタイルで記述されており、サンプルのp要素のコンテンツには全角空白が入っていない。こうしたことを見ると、普段、字下げした文書を書いたことがないのだろうか?
■段落先頭の字下げは、text-indentによる指定を推奨するべきだろう。
☆そういえば、このブログも字下げしてないぞ。IT屋さんは字下げしないのか… → 下の追記をご覧ください。
3.圏点
圏点は<em class="emphasis-dot">...<em> でマークアップして、スタイルシートで、
em.emphasis-dot {-epub-text-emphasis-style:filled} を指定するとある。こうすると
◎http://www.w3.org/TR/css3-text/#emphasis-marks
If only ‘filled’ or ‘open’ is specified, the shape keyword computes to ‘circle’ in horizontal writing mode and ‘sesame’ in vertical writing mode.
とあるので、横書きではU+25CF:'●' 、縦書きではsesame U+FE45: ‘﹅’になる。emphasis-dotがなんとなく、‘dot’(U+2022 ‘•’)を暗示しているので表面的に矛盾してしまう。それならいっそのこと'emphasis-dot'ではなくて'kenten’にしたらどうだろうか?
4.注
注の表示問題は難しい。マークアップとしては本文(参照元)のそばに配置して、プレゼンテーションは、リーダ依存(つまり注のポップアップ表示などを許す)とするのが理想なんだろうが。
5.図
図の配置は難しいので、自分も思案中です。
全体としてみて「JBasic マークアップ指針」はコンテキストとレイアウト分離の考えが徹底されていないように感じました。
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〔追記〕
「LaTeX2e 美文書作成入門」(奥村 晴彦著、技術評論社、改訂第5版」を読んでいましたら、pp.40-41に
「
ワープロ流 段落の頭では通常1文字分の字下げをする
電子メール流 段落の頭での字下げは通常しない。
」
とありました。TeXは電子メール流で、段落の頭の全角空白は不要で自動的に段落の先頭で1字字下げするようにスタイル設定されているとのことです。
奥村先生の説明は大変分かり易いのですが、実は、ワープロ流でも、段落頭の1字下げは日本語ワープロ流であって、Wordのスタイルを使えば、先頭行インデント・1字下げの段落スタイルを定義できるのです。
だから、ワープロ流というよりも、日本語原稿用紙スタイルというべきではないかと思います。
それに、続く本文には「DTPや電算写植用の原稿をテキストファイルで入稿する際には、ワープロ流で行なうことになっています。」って、今のDTPはスタイル指定で行なうのだろうと思いますが、まさか、InDesignも全角空白派なんだろうか?そんなことないと思うけどね。
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