「ここでも全角スペースで字下げを推奨している。」段落とはなにかを概念的によく考えるべきではないか?

社団法人デジタルメディア協会(ボイジャーとインフォシティ)が「EPUB3における日本語電子書籍ベーシック基準」と言う文書を配布している。

http://www.google.com/url?sa=D&q=http://goo.gl/t3hKS&usg=AFQjCNEo3tu5dDD3pO6807PUzr6gBHgg9w

ベーシック基準と言いながら、技術メモのような内容で位置づけも不明なので、どういう意図で公開したのかよくわからないが。それはさておき。

ざっと流し読みしたところで少し気になることがある。

1.電子書籍の識別子
これはちょうどいま私的に気にしているのだが、識別子の使い方に対する解釈が少し違うように思う。詳細はもう少し調べてみよう。

2.段落の解釈

次の記述がある。

「英語でいうparagraphと日本語の段落は、必ずしも同一のものではない。
欧文の場合には、行頭の文字下げに、複数の半角スペースを使用した場合には、どの程度の字下げ量になるかはReading System次第だが、日本語で、全角スペースを使用した場合には、厳密に1文字分の字下げとなる。
また、段落間の間隔について、日本語では、他の行間と同じ幅である必要があるが、欧文の場合には、やや広い場合がある。
そのため、日本語書籍にて、改行を全てp要素にしてしまうと、段落間の間隔が、他の行間と異なって表示される場合がありうる。」(p.31より引用)

とある。この解釈に基づいて<p>タグと<br />タグの使い分けを記述している。

しかし、上で引用した部分は観点が適切ではないように思う。つまり、欧文と和文の違いに着目するよりも、むしろ、スタイルシートなどのレイアウト指定技術の進歩と表示デバイスの精度の組み合わせを最適化するには、どうしたら良いかという観点で考えるほうが良いのではないか?

たとえば、「段落間の間隔について、日本語では、他の行間と同じ幅である必要があるが、欧文の場合には、やや広い場合がある。」と主張しているが、実際の調べてみればすぐに分かると思うが、欧文の書籍(紙に印刷したもの)では、段落間の空き(行間)は、段落内の行間と同じになっているのが普通である。これは和文の印刷書籍と変わらない。

これは、紙に印刷したときの精度は非常に高いので、段落の区切りを行間で示さず、先頭行の字下げで示せば十分ということなのか、あるいは紙に印刷したとき、段落間を空けるとスカスカになる、とかの理由だろう。

一方、ディスプレイの解像度はあまり高くないし、可読性も低い。あるいは、上下スクロール表示なので、欧文も和文も段落の区切りを行間の空きで示す方が読みやすくなり、意味をつかみやすくなる、ということではないかと思われる。このブログもそうだが日本語であっても段落間の空き量を広げるほうが意味をつかみ易いように思う。

このように欧文と和文を比較するなら、印刷同士、画面表示同士で比較するべきだ。つまり、段落間の空き量や段落の先頭の字下げはデバイス毎にもっとも読みやすい設定になるようデバイス依存のスタイル設定によって制御するべきものだと思う。

そういう意味で「段落の表示方法が変わらない場合には、<br />による改行と、全角スペースによる行頭字下げを行なう。」は反対である。全角スペースをレイアウトのために使うのは原稿用紙や既に生産・販売終了になった古のワープロ時代の名残なのである。

<br/>タグは、段落というコンテキストの中で改行することに意味を表すという場合に限って使うべきものだろう。

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