出版社が電子書籍制作をどこまで面倒を見るか?

先日開催された「eBP Meetup 2011〜電子出版2年目の課題と3年目への展望」についてのレポート記事(http://gihyo.jp/news/report/2011/10/2701?page=2)で少し理解に苦しむところがあります。

後半の電子書籍制作についてのセッションで、(ここから引用開始)モデレータの馮氏は,出版社がそこまで面倒を見る必要があるのかと疑問を提示した。「『電子で読めるようにしろ』と指示するだけで良いのでは?」と制作フローで考える意見」を出す…「知識としては必要。ただ,直接手を出すべきではない」と,あくまで体制による解決を提案した。(引用終了)

ちょっと分からないのは、馮氏は、GDP(「Gihyo Digital Publishing」)を立ち上げ,技術評論社電子書籍事業の拡大を目指している中心人物。GDPは社内で開発しているようだし、先日(2011年9月22日)のGDPの紹介イベントでの説明では、ノウハウを蓄積するためにやっているとのことでした。

ノウハウといっても販売やマーケティングのことなら、制作とは少し違う話ですが、あのときは、確か、EPUBのタグコーディングも自前でやっているという説明があったと記憶しています。そうしますと、「直接手を出すべきではない」という発言と完全に矛盾するのですが。もしかしたらそうではなくて、タグの設計は技術評論社で行なって、コーディングは外注したのかなあ。まあ、なにか誤解があるのかもしれませんが、このあたり、ぜひ、ご本人に聞いてみたいところです。

いづれにせよ、ここで問題になっているのは次のことではないだろうか。

ここ25年位流行っているDTPによる本作りにおいては、画面の上でレイアウトを指定して、ボタンを押せば本(PDF)ができた。これを出版社で行なうにせよ、外注するにせよ、出版社の中でPDFの内部を知る必要はなかった。

これに対してEPUBによる本作りでは、内部的にHTMLタグを使うのですが、このHTMLタグを誰がどうやって作るかという、そのワークフローがまだ確立していないのではないだろうか。HTMLタグを完全に使いこなすには、XMLという技術を理解する必要があり、さらにいえば、技術だけではなくXMLの思想の背景まで良く知っていないとタグの使いかたを最適化できないとも言えます。

このあたりに対する考え方がいろいろと議論の分かれ目になると思います。

ところで、CAS-UBではHTMLタグ自体はCAS-UBのユーザーには隠蔽しています。つまり、ユーザーは特にHTMLタグを意識する必要がありません。HTMLはシステムの内部でプログラムで操作しています。

○CAS-UB
http://www.cas-ub.com/