文字−電子書籍の夢、EPUBの現実を聞いて (感想)

昨日(7日)、「第6回ワークショップ: 文字—電子書籍の夢、EPUBの現実—」
https://sites.google.com/site/mojiken/activities/6th_ws/

が開催されました。ありがたいことに当日USTreamの中継がありましたので、それを見ながら半分くらい聞きました。聞きましたというのは、プロジェクターの投影内容がまったく見えなかったためで、途中でスライドが公開されたのですが。スライドはワークショップのWeb頁に公開されています。

小形氏の発表はEPUB文書を作成した経験談です。これは配布スライドをご覧いただくとそのままです。
※5月9日に「論集文字」第一号が発売になりました。
https://sites.google.com/site/mojiken/shuppan-butsu/ronshu_moji_no1

大石氏の報告はEPUBでのレイアウト指定とEPUBReaderの日本語文書表示機能に関する評価です。実際のところ、iBooksをはじめとする今のEPUBReaderは日本語を想定して作られているとは言えません。いわば、偶然(というと言い過ぎかもしれませんが)日本語が表示できるという状態なので、これを対象に文字組を批判するのは、ちょっとフェアでないような気もします。なんとなく、大人が子供を苛めているような印象を受けてしまいました。もちろん、発表者にそんなつもりはないでしょうが。

現在、EPUB3.0の仕様策定が進んでおり、同時にWebKitなどでの実装も進んでいるので、WebKitをベースとするリーダが普及してくれば、文字組については今後改善されると思います。

日本語対応したと言って出してきてから厳しく苛めましょう!

次の安岡先生の「リサイズとリフロー」の報告はなかなか示唆に富むものでした。この報告ではEPUBの最大の特徴がリフローにあるとした上で、文字と図を同一頁におきたい、さらにその上で文字のサイズと図のサイズを連動させるためにどうするかを検討したものです。

安岡先生の発表はEPUB文書のみです。次のところにあります。
http://bit.ly/kQ9Xxh

※この図は文字の字形を並べた表です。

1)float(回り込み)させる機能を使って図と文字を同一頁に入れることができる。
2)さらに図のサイズと文字のサイズを連動させるためにfloatのwidth(幅指定)をem単位とする。
3)これでは文字を大きくすると図が画面の幅一杯になってしまうので、図の幅を画面の60%にした上で図の内容自体をリフローさせたい。これはfloatの中に入れる図の要素(各文字の字形)をばらばらにして要素個々にwidthとheightで幅指定を行なえばできる。

ここまでは現在のEPUBでもできます。最後の問題として横書き本文に対応して縦書きの図を画面幅に対して一定幅の中でリフローさせる方法の話がありました。

これは現在できないのですが、次の条件が整う必要があるという結論です。
1)縦書きの図をリフローさせるにはfloatの中で縦書きができないといけない。
2)縦書きの図の幅を画面幅の60%に抑えた上で、縦書きでリフローさせるにはfloatに指定する高さが必要。横幅しか分からないので面積から高さを割り出す計算機能が必要だ。
3)2)の計算のきっかけをつかむために、フォントサイズ変更を検出する機能が必要。

ワープショップは途中までしか聞かなかったのですが、EPUBについて一般認識の度合い、期待と現実の落差の大きさを感じました。

同じくUSTream視聴参加者がつぶやいた「話しを聞けば聞くほど、EPUB来るぞ!っていう期待感がしぼんでいくような気がする...」という感想が心に残りました。
http://twitter.com/#!/mao3mao3/status/66782842570543104